世界の王室とホテル

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ヤンセンです。

 ちょうど今頃の季節だったけど、昔、ロンドンのリッツの廊下でお付きをいっぱい連れたデュバイの王族におおげさに頭を下げて挨拶されたことがある。ちょうどロイヤルアスコット競馬の時期でね、世界各地から馬主たちがロンドンに来ていたんだな。「ジャパニーズ?」ってうれしそうに笑って聞かれたけど、思えばあの頃はまだ、世界における「ジャパン」ブランドの価値は高かったんだなー。今はもう見る影もないほど下落しちゃってるけどね、ん。
 そういえば、ホテルにも投資している世界の王室ってけっこういたんだよなぁと思って、あらためて調べてみた。
 まず、世界の王室っていったいどのくらいあるのかというと、26くらいあるらしい。なかでも有名なのはなんたって英国王室で、ロンドンのリージェント・ストリートなんかも王室保有で資産は約1兆円って聞いて、へぇ〜、すごいんだなぁと驚いたけど、いわゆる “金持ち度” でいうと、実は英国王室はそれほどたいしたことがない。ベスト10にも入らない。

すごーく大金持ちな王室ってどこ?

 じゃあ、どこの王室が大金持ちなのか?

 1位は、なんとアジアの王室で、タイ王室。そう、あの王様がずっと国を離れてドイツのホテルを1軒借り切って側室たちと暮らしているっていう。実はタイ王室は世界一の金持ち王室で、資産は約300億ドル(約3兆3420億円)。これはタイの国家予算の約三分の一に相当するっていうから凄いねぇ。ちなみに前王の故ラーマ9世の遺産は約6兆円と言われている。こうした莫大な王室資産を管理しているのは王室財産管理局で、ドイツのホテルチェーンのケンピンスキも1994年までは過半数の株式を所有していた。2017年に売却して、現在の筆頭株主はバーレーン王族。

 2位は、これもアジアの王室で、ブルネイ王室。国王の個人資産は200億ドル(約2兆2300億円)で、こちらはなんと、国家予算の4倍を超える! 王室資産は財務省が管轄する政府系ファンドのブルネイ投資庁が運用しているが、ブルネイ王室は、超高級クラスのホテルを集めたドーチェスター・コレクションのオーナー。ロンドンのザ・ドーチェスター、パリのムーリス」「プラザ・アテネ、ロサンジェルスのビヴァリーヒルズ・ホテル」「ベル・エアとか、もうきれいどころばかり…じゃなかった、選りすぐりの高級ホテルがそろっている。ブルネイ投資庁の運用担当者って、もしかして、ホテルジャンキー? ってくらい。 2014年にはイスラム刑法の鞭打ち刑を導入したことから、ハリウッド俳優やリチャード・ブランソン率いるイギリスのヴァージン・グループなどからこれらのホテルのボイコット運動が起きたことがあったね。あとブルネイの首都には、自称・7ツ星ホテルのジ・エンパイア・ブルネイ客室数522室も所有している。
 ブルネイの王族たちって旅好きなのか、けっこうよくあちこちで会うんだよね。パリの「ムーリス」の三ツ星レストランでディナーしてたとき、真ん中に大きな丸テーブルが用意されてるなぁと思ってたら、子ども連れのアジア系のファミリーが10人くらいどやどややってきて、コーラを飲みながら、ハンバーガーのようなものを食べ始めた。シェフの料理を堪能していたほかのゲストたちはみなギョッとして驚いた。ここで、なぜ??? ギャルソンに聞いたら「ホテルのオーナー・ファミリーなんで、すみません」とのこと。
 そして、3位はサウジアラビア王室。資産180億ドル。サウジについては後で詳しく書く。ちょっと毛色が違うんでね。
 4位はアブダビで、5位はデュバイ。デュバイは1990年代の終わりにオイルが枯渇した後を見すえて観光に舵取りを切り替え、ご存知のように今やデュバイはグローバルホテルブランドが集中する世界有数のホテルパラダイスシティと化している。1999年には、当時世界で最も(高さがね)高いホテルブルジュ・アル・アラブをわざわざ海上に建ててオープンした。このホテルをはじめ、世界各地に「ジュメイラ」ブランドのホテルを所有・運営するジュメイラ・グループは、現首長のシェイク・モハメドがオーナーで最高責任者をつとめるデュバイ・ホールディングの傘下企業。
 6位、7位になって、初めてヨーロッパの王室が出てくる。けど、ルクセンブルク、リヒテンシュタインと小国ばっか。8位がモロッコで、9位がカタール。
 で、10位がモナコ王室。面積が2キロ平方しかないっていう極小国だけど、アルベール2世の個人資産は10億ドル(約1114億円)…って、なんか少ないような気がするのは、だんだん感覚麻痺してきたからだね。モンテカルロにある「カジノ・ドゥ・モンテカルロ」やオテル・ドゥ・パリとかみんな SBM社の所有なんだけど、モナコ王室がこの会社の大株主。
 というわけで、王室って、どこもすごい資産家だし、積極的に資産運用もしてる。そういえば、エリザベス女王が個人資産をタックスヘイブンへ投資しているって、一時話題になったことがあったね。

サウジアラビアのアルワリード王子は世界有数のホテルオーナー

 さて、サウジアラビア王室のお話。
 サウジ王室も国内外にホテルを所有しているけれど、サウジといえば、ホテルオーナーといえば、この人を忘れることができないのが、アルワリード王子
”アラビアのウォーレン・バフェット”と呼ばれる投資家。アラブ一の大富豪ともいわれ、その資産は一時、320億ドル(約3兆5600億円)と想定されたけど、2017年、♬あーる日突然、サウジ政府によって汚職容疑で拘束され、首都リヤドの「リッツカールトン・リヤドに留置された。3ヶ月間の拘留の後に莫大な和解金を払って釈放されたが、逮捕によりアルワリード王子保有の企業の株価が暴落し、資産は一時152億ドル(約1兆7100億円)にまで減少したと言われた。
 このアルワリード王子だが、王子とはいうものの、出自がサウジ王室では主流のベドウィン族ではなく、そもそも父親が王位継承権を放棄したという名ばかりの王族。リヤドの士官学校を出た後、アメリカの大学に留学。自らの才覚と力で、投資ビジネスによって莫大な富を築いてきた、と巷では言われている。とはいっても、自分の会社の名前にキングダム・ホールディング・カンパニーなんて、王族であることをちらつかせるような名前をつけてるし、サウジ王家に連なる一族であることがビジネス界でもプラスに働いたにはちがいない。1991年にシティバンクを救済したことで一躍投資ビジネス界で名をあげ、以後、有名ブランドへの投資を積極的に行うようになった。パリのジョルジュサンク・ホテルなんかもそのひとつだ。
 ホテルは彼にとってかっこうの投資対象のようで、いろいろ手を出している。2006年にはカナダの「フェアモント・ホテルズ&リゾーツ」を買収し、同年、「ラッフルズ・インターナショナル」も買収して合体させ、フェアモント・ラッフルズ・ホテルズ・インターナショナル (FRHI)に名称変更した。そして、2007年にはフォーシーズンズ・ホテルズ&リゾーツを37億ドル(当時のレートで4,491億円)でビル・ゲイツと共に買収した。2010年にはFRHIの40%の株式をカタール資本に売却。スイスのホテル運営会社モーヴェンピックも一時所有していたが、2018年にアコー・グループに66.7%の株式を売却した。また、アラブ最大のエンターテイメント企業で傘下にロターナ・ホテルズ&リゾーツを持つロターナ・グループも所有。
 ついでにいうと、首都リヤドのサウジで一番高層ビルのキングダムセンターも彼のもの。

 あらためてこうして書いてみると、世界の王室って、けっこうホテル界に深く関わっているんだね。
 というわけで、また「王室とホテル」続編とか書いてみたいと思う。乞うご期待!

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