パンパシフィックホテルで思い出す日本のホテル界が燃えていた時代

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 ヤンセンです。
 ロンドンに「パン・パシフィック・ロンドン」が9月1日、開業したっていう「ホテルヘッドラインニュース」の記事読んで、なつかしくなった。
 昔、よく泊まったなぁ、パンパシフィック・ホテル。シンガポールとかグアム、クアラルンプール、たしかバンコクにも一時あったよな。バンクーバーなんかはハーバー沿いのものすごく良いロケーションでね、地元でも人気のホテルだった。
 どこもその街のトップグループに位置するようなけっこうグレイドが高いホテルで、日本の東急グループ系のホテルってことで、ここにさえ行けばまともな日本食が食べられるっていうんで、日本人旅行者の間では知られていた。まあ、1980年代頃はまだまだ変ちくりんな日本食が横行していた時代だ。
 そういえば、横浜の「横浜ベイホテル東急」もかつては「パン パシフィックホテル横浜」で、ホテルジャンキーたちの間では”パンパシ” なんて愛称で呼ばれていた。
 実はこのパン・パシフィック・ホテルズ&リゾーツ、今はもう東急グループではない。今から14年前、2007年にシンガポールの大手ディベロッパー、UOL グループの UOLコーポレーションに117億円で売却された。

東急・五島昇のパンパシフィック構想で作られたホテルチェーン

 思い返せば、パンパシフィック・ホテル全盛の1980年代は、バブルの時代でもあったけれど、ホテル界もすごく動きがあっておもしろい時代だった。
 堤清二率いる西武百貨店グループ(のちにセゾングループ)と五島昇率いる東急グループの東西両陣営が、ともに世界に目を向け、グローバルなホテル界へと、前を見つめ、果敢に船を漕ぎ出した時代でもあった。ふたりとも二代目だったことから、マスコミでもしばしばライバル同士として取り上げられていたものだった。
 海外進出に際し、セゾン堤清二は外資ホテルチェーンのインターコンチネンタル・ホテルズを買収する道をとったが、東急五島昇は独自に海外にホテル会社を作る方法を選んだ。
 五島は「21世紀の世界は、大西洋中心の世界から、太平洋中心の世界になる」が持論で、「環太平洋経済圏構想」という夢を持っており、太平洋をめぐるようにホテル網をつくる構想を持っていた。その実現のため、1971年にはリージェント創業者の一人で名ホテリエとして業界では知られていたロバート・バーンズと組んで、香港に共同経営のホテル運営会社、リージェント・ホテルズ・インターナショナルを設立した。ここを足場にして環太平洋の諸都市に次々とリージェント・ホテルを開業させたが、1973年にはバーンズとは袂を分かち共同経営を解消。その後、東急の海外ホテル事業会社として、パンパシフィックホテルズをシンガポールに設立した。1989年に五島が死去した後、バブル崩壊もありグループの経営が悪化し、東急は横浜のホテルを除いたすべての資産の売却を決めた。
 この「パンパシフィック・ホテル」ブランドを引き継いだシンガポールのUOLコーポレーションを1973年から今日に至るまで半世紀に渡って率いているのは、黄祖耀(ウィーチョヨー)氏、現在92才。シンガポールの大手銀行、ユナイテッド・オーバーシーズ・バンクの会長で、同地では有数の億万長者として知られている男だ。彼もまた父親が創業した事業を継いだ二代目経営者なのだが、もし、五島と彼が出会う機会があったとしたら、どんな会話が交わされたんだろうね。
 今回、パンパシがロンドンに進出したっていうニュースを聞いて、五島昇堤清二、この二人をなつかしく思い出したんだけれど、今からみても実に傑出した経営者だったよね、ふたりとも。
 それぞれ同じホテルを扱いながら、五島昇はリゾート、堤清二はシティホテルという棲み分けがあった。
 五島昇は、ユニークな考え方のもとに、ハワイ島の何もない溶岩流の土地に同島の名ホテルのひとつとして今でもホテルジャンキーたちに支持される「マウナラニベイ・ホテル」を独自に開発して作りあげ、バーンズと共に作った一連のリージェントホテル、そして、パンパシフィックホテルと、いまあらためて数え上げれば、実に大きな足跡を世界のリゾート界に残した。
 一方、堤清二の方も、インターコンチネンタル・ホテルズという世界に名だたる高級ホテルチェーンを買収し、さらに、銀座に”アーバンシティホテル”という当時としては画期的でユニークなコンセプトのもとに、劇場をもった超高級プティホテル「ホテル西洋銀座」を作った。
 僕はこのふたりにおおいに期待していた。彼らのような傑出した経営者たちがこれからのホテル界を変えていくんだろうな、と。それぞれ二代目だけれど、ユニークな視点を持った、勢いがある経営者だった。彼らには壮大な夢があった。
 それにしても、最近は彼らのような夢を見させてくれる、スケールのでかい実業家っていうのが出ないね、日本では。ま、自民党の総裁選なんか見てても、政治の世界もおんなじだけどね。みんな小粒で凡庸。そろそろ、自民党…じゃなかった、ホテル界をぶっ壊せ!なんていうホテリエ、出てこないかねぇ。楽しみに待ってるよ!

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