ホテル・ストーリー・パラダイス

ホテルが舞台になった小説

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ホテルが舞台のホテルもの

  • 「ホテル」アーサー・ヘイリー

アメリカ・ニューオーリンズのある老舗の名門ホテルで、買収劇を通して語られる、旧ホテルビジネス(旧態依然とした経営の独立系老舗ホテル) vs 新ホテルビジネス(1965年の発行当時はホテル界で新しいビジネス形態として登場していた新興チェーンホテル)、ホテルの各部署で働く人々の仕事ぶりや人間像など、ホテルの内幕を描いた小説。

  • 「名門ホテル乗っ取り工作」フリーマントル

新興ホテルチェーン vs 時代の波に乗り遅れた名門ホテルチェーンの闘いを描く企業小説(1982年)。

  • 「沈まぬ太陽」(四)会長編 山崎豊子

日本航空がモデルとなっており、系列のホテル会社がロンドンやニューヨークのホテルを買収するインサイドストーリーが描かれている。

  • 「バートラム・ホテルにて」アガサ・クリスティ

ロンドンにある、インテリアや施設、働くホテルマンたちも、サービスも、すべてにわたってロンドンの古くからある老舗ホテルはこうあってほしいと人々が期待する姿を実現している “完璧なホテル” を舞台に展開されるミステリー。

  • 「サヨナライツカ」辻 仁成

バンコクの「オリエンタルホテル」(現 マンダリンオリエンタル・バンコク)を舞台にした小説で、サマーセットモーム・スイート、フレンチレストランの「ノルマンディー」、「ヴェランダ」など昔の同ホテルを知るひとにとってはなつかしいホテルシーンが展開される。

  • 「花ホテル」平岩弓枝

コートダジュールのプティホテルを舞台にしたロマンスミステリー。異国でホテルの女将としてホテル経営をする日本人女性の姿が描かれている。

記憶に残るホテルシーンがある小説

  • 「華麗なる一族」山崎豊子

「志摩観光ホテル」の英虞湾をのぞむダイニングルームが舞台となった、”華麗なる一族”の妻妾同席の会食シーンが圧巻。

  • 「旅の時間」吉田健一

ロンドン、ニューヨークなど旅先のホテルを通じて、ホテルの格に合わせたゲストのあるべき所作や客層を描いたシーン。

  • 「輝ける闇」開高健

ベトナム戦争当時のサイゴンの、外国人ジャーナリストなどが滞在していた「マジェスティック・ホテル」「キャラベル・ホテル」などの匂い立つようなシーン。

  • 「模倣犯」宮部みゆき

新宿の高層シティホテルを犯人が呼び出しの場として使ったシーン。市井に生きる豆腐屋の親父との待ち合わせ場所にここをあえて選んだ犯人のコンプレックスがこれによって逆に浮き彫りになる。

  • 「テニスボーイの憂鬱」村上 龍

「川奈ホテル」がモデルとなったリゾートホテルを舞台に、敷居が高いホテルにチェックインする土地成金の息子である主人公の気持ちを描いたシーン。著者は、当時、角川書店の編集者だった幻冬社社長の見城徹氏とこのホテルに長期滞在してこの作品を書いた。

  • 「ヴェネツィアの宿」須賀敦子

1930年代に1年かけて豪勢な欧米旅行を体験し「ホテルという日常空間からかけはなれた空間」を愛する父の東京の定宿はライト建築時代の「帝国ホテル」で、著者が語る父親像にホテルシーンが使われている。

  • 「オリガ・モリソヴナの反語法」米原万理

ソ連邦が崩壊した翌年の1992年のモスクワが舞台。改修して昔の姿を取りもどしたアール・ヌーヴォー様式の老舗ホテル「サボイ」の今の姿、かつて華やいでいた時代の姿など、新旧のホテルシーンが語られている。

  • 「ホテル・ストーリー」森 瑶子

香港のペニンシュラ、バンコクの「オリエンタル」、シンガポールの「ラッフルズ」などを舞台にした短編集。なかでもリニューアル前の「東京ステーションホテル」を舞台にした同名の短編に出てくる、ダイニングルームで主人公の人妻がひとりで食べる朝食シーンが印象的。

ノンフィクションもので、使えるホテル利用術が書かれているもの

  • 「スパイのためのハンドブック」ウォルフガング・ロッツ

元イスラエルの情報機関モサドの大物スパイが著者で、ホテルでスタッフたちに上客として扱われるためのテクニックが書かれている箇所があり、その段階的に人心を籠絡していく心理戦術は実際のホテル利用でも使えるだろう。最初の段階で渡すチップの額は、彼らが上客からのチップとして期待する金額の2倍で、「親しくなりたい様子はみせるが、なれなれしくはさせない」。

  • 「ザ・ホテル」ジェフリー・ロビンソン

ロンドンの名門ホテル「クラリッジス」に5ヶ月間滞在したノンフィクション作家の著者による、ホテルのスタッフ・オンリーの扉の向こうで、日々どんなドラマが展開しているのか、さまざまな職種の仕事内容やかかえている問題などを書いた内幕もの。表舞台についても、アラブの王族ら富豪たちの度肝を抜くようなリクエストやふるまいなど、超高級ホテルの上客のゲストたちの姿が描かれていて客層がわかる。

  • 「 HOTEL BABYLON 誰も知らない五つ星ホテルの24時間 匿名ホテルマンの爆笑告白記」イモジェン・エドワーズ・ジョーンズ&匿名

ロンドンの超高級ホテルのレセプショニストが匿名で書く、すべて彼の経験上、実際に起きた事実・・・事実は小説より奇なり、を地で行くようなエピソードが、午前7時から1時間ごとの24時間、1日の出来事として書かれている。ホテルマンの視点から書かれているので、逆にどうすればホテルマンにいい客として扱ってもらえるのかの参考になる。

いろいろなホテルの歴史や出自がわかるもの

  • 「ホテルからアジアが見える」青木 保 編著

アジア通の学者や作家、ジャーナリストたちが、それぞれ得意分野とする国を代表する20軒の名門ホテル、クラシックホテルを中心に、話題のホテル(2001年出版当時)について、背景となる国や街の歴史、経済、国民性などまで幅広く掘り下げながら語っている。それそれの筆者が自分と関わりが深く好きな国だけに、ホテルについて綴る筆致にも愛情がこもっている。

  • 「フォーシーズンズ 世界最高級ホテルチェーンをこうしてつくった」イサドア・シャープ

フォーシーズンズ・ホテルの創業者であるイサドア・シャープによる自叙伝。フォーシーズンズの大躍進のきっかけとなった1992年のリージェント買収劇について、フォーシーズンズ側からの見方、内幕を書いているが、「この契約は夢のようだ」と書かれているほど “いいお買い物” だったようだ。後に同チェーンの名ホテルとして知られるようになったホテルの多くが旧リージェントが開発したホテルだった。

  • 「マリオット・ウェイ サービス12の真実」J.W.マリオット・ジュニア、キャシー・アン・ブラウン

創業者である父の跡を継いでマリオットの二代目経営者となったJ.W.ビル・マリオットによる、12の教訓仕立てでマリオットの企業文化について書かかれた、いわばグループの社員向けの教育書のようなもの。よって、利用者にとっては、マリオットらしさとはなんなのかがわかる。

  • 「客室係がみた 帝国ホテルの昭和史」竹谷年子

GHQ のウィロビー少将をはじめ、マリリン・モンロー、アラン・ドロンなどのゲストと客室係として接点を持った著者が、自分の目線から書く、どんな「帝国ホテル」史よりも、かつての古き良き時代の「帝国ホテル」像を伝えるノンフィクション。

  • 「山の上ホテル物語」常盤新平

かつての「山の上ホテル」を愛した作家が、「山の上ホテル」を愛する人のために書いた本。「山の上ホテル」はなぜ川端康成、三島由紀夫をはじめ多くの作家たちに愛された “特別なホテル” だったのか、創業者の吉田俊男氏がどんな思いをこめてこのホテルをつくったのか、さまざまな角度から書いている。作家の高見順はいつも銀座からきれいどころを三、四人連れてきては1階のバーで飲み、「おれはここで死ぬんだ」と言ってたほどこのホテルを愛した。作家の山口瞳は、このホテルが一番だけど「一番というのは一番上等という意味ではない。一番好きだと言ったほうがいいかもしれない」と語っている。

ニューヨークの「アルゴンキン・ホテル」もかつてそんなホテルだったが、今はどちらのホテルにもその面影はないのが残念だ。