アマンリゾーツ 闘いの歴史<1>

 はじめまして、ヤン・センです。
 世の中にはアマンジャンキーという人たちがいて、ボクもアマンリゾーツのことはよく聞かれる。そこで、ごあいさつがわりに、アマンの創業者エイドリアン・ゼッカの闘いの歴史について書いてみる。

 2014年の2月のことだった(以下、2014年当時のお話)。ロサンジェルスから乗った飛行機で隣席になったインド人のビジネスマンとお互いに読んでた新聞を交換し、「ジ・エコノミック・タイムス」という、インド版の日経新聞のような新聞を開いたところ、2月10日付けの記事で、こんな見出しが目に飛び込んできたんだ。


『DLFがアマンリゾーツを売却した』

 あれ? これからアマンリゾーツに泊まるのに…と思って、記事を読むと、どうやら、アマンリゾーツのファウンダーであるエイドリアン・ゼッカが、オマール・S・アマナットなる人物と組んで、インドの不動産ディベロッパーのDLFから株を買い戻したということなのらしい。
 なんか、前にもゼッカって、同じようなことやってなかったっけ。一度アマンを追われて、マーハ・リゾーツという新しいホテルブランドを作って再起をはかるって言ってたけど、株を買い戻してアマンに劇的に復活!とかなんとかいう話。

(c)Yangsen


 そういえば、それまで一切、自分の写真を公表しなかったゼッカが、あの時はじめて顔写真を公開したから、よっぽどうれしかったんだろうけど、あの写真、プロから見るとちょっといまいちだったね。それまでのベールに包まれたっていう神秘的なゼッカのイメージをあっさり壊しちゃった、と僕は思う。あれれ、こんなオジサンだったのかって。ああ、僕にひとこと言ってくれれば、もっと良い写真撮ったのに…。
 ま、ともかく、記事を読んでみた。

(c)Yangsen

 

ゼッカと組むオマール・S・アマナットって、どんな男?

 ゼッカと組んだアマナットって人物、若くして、アメリカで電子証券取引システムの会社を興し、会社を作っては価値を上げて売却するというのを繰り返して資産を作り、ハリウッドの映画界にも進出して映画制作もやってる・・・という人物らしい。
 さっそくググってみると、個人のサイトも持っていて、トップ画面で次々とスライドショーで流れる彼の写真。けっこうナルシストっぽいね、こりゃ。それでもって、かなり若い。せいぜい30代から40前後ってとこだろかね。ゼッカはたしか、もうとっくに80越えの怪老人だと思うけど。
 ふーん、ゼッカは、これまでも次々と組む相棒を変えてきたけど、今度の相棒はヤングマンかねぇ…なんて思いながら、再び記事に戻ると、売却価格は3億6千万ドル。ただ、記事によると、そのうち7千万ドルは既に支払われたけれど、残りの2億9千万ドルをアマナット君はまだ用意できてないようだ。さぁて、どうするかね、アマナット君。
 さらに記事によると、ゼッカが07年にDLFアマンリゾーツを売却した際の価格は約1億5千万ドルの負債も含めて4億ドルだったので、差し引き4千万ドルの儲けってなるところだけど、DLFがニューデリーに2009年にオープンしたアマン・ニューデリー(現「ロディ」)は含まれないそうな。
 記事にじっと見入っていたら、隣のインド人ビジネスマン、「DLFはね、この会社を売ったおかげで負債が減ったのがマーケットで好感され、株が上がったんだよ」とさ。
 インド人にはインド人の、アマンジャンキーにはアマンジャンキーの事情ってものがあるんだよね。
僕もアマンリゾーツは初期の頃から好きでよく泊まってる。スタッフにトモダチも多いから、これまでもいろいろ噂も聞いてる。次にどこにアマンが出来るのかっていう話がアマンジャンキーの人たちはとりわけ大好きだって言うんで、聞かなくてもよく話してくれる。でも昔はね、現場のスタッフレベルにはそんな話が漏れては来なかったんだけど、最近はすぐに話がまわるようになったね。
 あと、有名人の誰々が泊まりに来たとかも、すぐ話してくれちゃう。なんというかね、ちょっとみんな口が軽すぎるって感じがするよね、この頃のアマンは。昔はもっと、ゲストとの間にビシッと緊張感があって、あれがアマンの魅力のひとつだったんだけどね。
 口が軽いっていえば、日本の銀行マンたちも口が軽いらしいね。「アマン京都」の情報が流出したのも銀行関係筋からだっていうし。そういう話はすぐに知れ渡る。バリ島の「アマヌサ」のプールサイドで寝転んでたときに、隣のデッキチェアにいたカリフォルニアから来た国際金融の若いビジネスマンが「ジャパニーズ・バンカーは口が軽いから気をつけなくっちゃあ」って言ってた。
 話が脇道にそれたけれど、あの後ひさしぶりに訪れたプーケット島のトリサラ、元アマンプリのGMだったアンソニーのホテルね、今度はあそこで知り合った北欧系の投資家がおもしろい話を教えてくれた。
「あの話、ヴァロージャが一枚からんでいるから、きっと第二幕があるはずだよ」って。


<その2>に続きます。

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