サッカーのロナウド選手は、ホテルチェーンのオーナー

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 ヤンセンです。

 クリスティアーノ・ロナウド・ドス・サントス・アヴェイロ。
 って、長ーい本名でいうと誰だかわかんないけど、サッカーのロナウド選手のことね。
 彼がオーナーのホテルが、今日、マドリッドでソフトオープンした。
 ペスタナ CR7 グラン・ヴィア・マドリッドっていう名前で、元は老舗書店だった9階建の建物を買い取り、ホテルに改装したコンバージョンホテル。360度の眺望が開けたルーフトップバーや、サッカーの試合なんかをみんなで一緒に観戦して盛り上がれる「スポーツバー」があり、ロナウド自らユーチューブのホテルのPR動画に出て宣伝してる。
 実はロナウド、このホテル一軒だけではなく、ホテルチェーンのオーナー。
 ロナウドっていっても日本ではサッカーファンは別にして、一般にはベッカムとかメッシほどには知られてないようだけど、ヨーロッパでは絶大な人気を誇っていて、彼がドリブルで鮮やかなフェイントを見せる度、シュートを成功させる度、アナウンサーはひとこと、こう絶叫する。
ロォ ナァーウ ドォーーーーーっ!」
 ほかに何にも言わない。
 とにかく、もう圧倒的な存在なんだよね。インスタのフォロワーは2億人を超え、世界で最も多くのフォロワーを持っている男でもある。ただいま36才、男盛り。
 ロナウドは、アフリカの北西沖に浮かぶポルトガル領マディラ島生まれのポルトガル人で、サッカーのポルトガル代表で主将。ポジションはフォワード。サッカー史上最多得点記録保持者で歴代最多優勝回数を経験。さらに、史上最もたくさんのサッカーユニフォームを売り上げた選手(2位はベッカムね)。と、もう、大記録の連発で、サッカー界では押しも押されぬトップに君臨する選手だ。
 この男、サッカー史上最高の選手といわれるほどの逸材なんだけど、実はビジネスマンとしてもなかなかの才能をもち、手腕を発揮していることでも知られている。
 2020年にはサッカー選手として初めて生涯収入が10億ドル(約1,090億円)を超え、その資産をしっかりと投資しているらしい。彼がまず手がけたのが、知名度を生かした自身の愛称「CR7」のブランド化。2013年からアンダーウェア、衣料品、香水、靴などでビジネス展開している。
 そんな彼がホテル界にはじめて進出したのは、今から5年前の2016年のことだった。
 「ホテルビジネスにはかなり前から関心を持っていたんだ」
 とその際、メディアのインタビューで語っている。
 現在、彼の故郷であるマディラ島フンシャルとポルトガルの首都リスボンにCR7 ライフスタイルホテルブランドのホテルを持ち、そして、今日新たに3軒めとしてスペインの首都マドリッドのホテルが加わった。彼のホテルは、若い層をターゲットとしたライフスタイルホテルで価格帯は10,000円から20,000円程度とお手頃価格。
 ホテルビジネスをやるにあたって彼が組んだ相手は、ポルトガルの大手ホテルチェーン、ペスタナ・ホテル・グループ。50%ずつ出資しあう共同事業で、4軒のホテルで7,500万ユーロ(約1,000億円)規模の投資なんだそう。ん、ってことは、ロナウドは500億円の投資をしたってことだね。
 余談だけど、ペスタナ・ホテル・グループの創業者マニュエル・ペスタナ氏もまた、ロナウドと同じマディラ島で生まれ育った人。この人、いわゆる典型的なセルフメイドマンで、満足に学業も受けられない子だくさんの貧しい家庭で育ち、26才で故郷での将来に見切りをつけて南アフリカに渡って農園労働者からスタートし、苦労して貯めた金で八百屋を買い取り、少しずつ事業を広げ、1972年にマディラ島に第一号ホテルをつくって故郷に錦を飾った。 
 ロナウドは1985年生まれだから、彼にとっては地元のペスタナ・ホテルはなじみある名前だったんだろうね。
 「CR7 ライフスタイルホテル」ブランドの第一号ホテルとしてロナウドの故郷に開業したペスタナ CR7 フンシャル客室数49室は、若い層をターゲットとしたライフスタイルホテルで、宿泊料は実勢で104ユーロ程度。地元のヒーローであるロナウドのメダルやカップを飾ってある展示室もある。ロナウド自身のこだわりがみえるのは、この規模ながらプライベート・トレーナーも置いているフィットネスジム。ロナウドって、体作りにはものすごく気を使ってるからね。
 ポルトガルの首都リスボンに開業したCR7 リスボン客室数82室では、集客のための”ロナウド使い”はよりはっきりして、かなり露骨。外壁やエレベーター内でロナウドの姿が映し出されるのみならず、バスルームの鏡にもロナウドの顔があらわれたりする。女性客はいい男とツーショットみたいで喜ぶかもしんないけど、こんなハンサムな男と自分の顔を並べるのって、男はイヤだと思うけどね。あ、それからね、カーペットの足型模様も、ロナウドの足型だってサ。もう、ロナウド使いまくり。
 4軒目はニューヨークのタイムズスクエア、その次はモロッコのマラケシュにも開業する計画で、ホテル数ももっともっと増やしてワールドワイドなホテルチェーンに育てたいらしい。

ところで、サッカー選手ってなんでホテルやりたがるの?

 日本のサッカー選手でも本田圭佑選手なんかがホテルやりたいって言ってるらしいけど、サッカー選手でホテルやりたいっていう人、結構いる。でも、野球選手でホテルやりたいっていう人、聞いたことがない。
 サッカー選手って、スポーツ選手のなかでも異質というか、ぜんぜん違う人種なんだよね。一見、チームで戦っているから「組織」の人間のように見られるんだけど、実はそのまったく逆。「個」のスポーツなんだよね。圧倒的に個人のパフォーマンス、自由度が高い。
 それとね、サッカーの世界って、トップクラスになるとグローバルで国境がない世界に生きている。移籍のシステムができていて、ものすごく流動性が高い世界だから、選手たちは国境を越えて、より自分が活かせる好条件のところにどんどん移る。そういう世界で生きてきて、しかも試合で世界各地を転戦して、しょっちゅう移動しているから、ホテルは肌感覚でよく知っている。だから、ホテルビジネスっていっても、違和感なく自然に入っていけるんだろうね。
 むかし、日本にもハットトリックを達成し傑出したフォワードとしてオリンピックに出場できたのに、それを捨て、プロになりたい一心でひとりドイツに渡った尾崎加寿夫というサッカー選手がいたんだけど、当時日本ではなんでオリンピックに出ないんだ!非国民!と大いに叩かれてね。彼の理解者はほとんどいなかった。「国境を越えるプロフェッショナル」という本の執筆のための取材で彼に会いにビーレフェルトまで行ったことがあるんだけど、そんな日本では個人主義者に見られた彼についてコーチがただひとこと言ったのは、「彼はなぜシュートを打たないんだ?(フォワードなのに)」。いくらアシストでいいプレイをしようと、シュートを打たない点を入れないフォワードはまったく評価されないのが欧州サッカーの世界。結局、あの尾崎ですら、ダメだった。
 だからロナウドのように、オレなんだ、オレ、オレ、オレだよ!と自分を強烈に出して、全部、個、個、個、個、な人間でないとトップは張れない。
 ロナウドってまだ36才、才能も金もエネルギーもありあまってるんだから、ホテル界でもどんどんやって強烈な新しい風を吹かせてよ。ホテルって、君の純度の高い「個」の世界、男のロマンを実現できる場なんだから。

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