マリオット・カルチャーってどういうの?

三代目のデイヴィッド・マリオット  (c)Yangsen

 ホテル選びの際、知ってるとけっこう役に立つのが、ホテルチェーンのカルチャーの違い。

 自分に合うホテル、合わないホテルを見わける目安になる。

 ひとつ前の記事で書いたハイアットとは正反対のカルチャーを持つのが、マリオット

『個人プレイ? いいんじゃないのぉ。カッコよければいい、楽しければいいじゃん!』

というハイアット・カルチャーに対して、

『自信過剰は自粛しようね、個人プレイよりチームワークが優先だ、まじめに正しくやろうね。でも利益はちゃんと上げてよね』

というのがマリオット・カルチャー。

 そして、マリオットはまた、『社員は仲間です、社員を大切にすれば、社員はお客様を大切にします』という麗しいポリシーのもと、会社のめんどうみがいいことで知られている。

 そんなマリオットの社風のベースに流れているのは何なのか。

 というと、やっぱりマリオットの創業者、初代 J・W・マリオットが “非常に” (が付くほどの)敬虔なモルモン教徒であるってことが、深~く、色濃~く、みっちりと社風に影響を与えてるだろうね。

 モルモン教っていうと、日本では、「アルコールやタバコ、コーヒーなどカフェインを含むものは禁止な宗教でしょ」ってことくらいしか知られていないけど、19世紀にアメリカで生まれたキリスト教系の新興宗教で、聖地は西海岸のユタ州ソルトレイクシティー。

 ちなみに、一代目 J・W・マリオットが生まれ育った家庭は、モルモン教 創始期の ”モルモン・パイオニア・ファミリー” という特別なファミリーのひとつ、というくらい純度が高いモルモン教徒。

 はて、モルモン教徒とは、いったいどういう人たちなのか。

 ひとことで荒っぽく言っちゃうと、 “アメリカ人” になれない善良な人たち。まじめで、おとなしく、静かで、いい人たち。

 うん、そうだな、イメージとしては、先の大統領選挙の際にワシントンの連邦議会議事堂に武器なんかもってなだれこんで占拠しちゃった過激なトランプ派のアメリカ人たちとはまるで正反対な、対極にいる人たちだと言えばわかりやすいかもね。

 ただ・・・教義に反する酒とかコーヒーについては神経質というか、ふつうからみると “過激に” 反応するってとこが、ちょっと、ん? アレ?っていう感じ。

 アメリカでは企業のトップエグゼクティブクラスにもけっこうモルモン教徒はいるんだけど、彼らの場合、ビジネスやる時は経済論理に従い、利益出すことが正しいこと、業績上げることが我らが進む道だ!ときっちりビジネスマインドでやるって感じだね。

 共和党の大統領候補だったロムニー氏も敬虔なモルモン教徒で知られているけど、学業も優秀、ビジネスでも成功をおさめ、酒もタバコもやらず優等生的ライフスタイルで「ちょっと恐ろしいくらいパーフェクトな大統領候補」と言われ、ニューズウィーク誌が「ふつうのアメリカ人とは異なる」と評したほどだったね。ちなみに、ロムニー家はマリオット家とは家族ぐるみで親しかったため、初代マリオットからウィラードというファーストネームをもらっている。

いよいよ世代交代、三代目の時代に突入

 

 さて、そんなマリオットに激震が走ったのは、先月のこと。マリオット一族以外からの初のCEO登用で注目され、期待に応えて、スターウッドの買収を手がけてマリオットを世界最大のホテルチェーンにしたアーン・ソレンソン氏がガンで急死した。

 後釜には、国際開発事業を統括するグループ・プレジデントだったアンソニー・カプアーノ氏 55才が就任。

 アメリカ東海岸のボルチモア生まれで、ホテル界では”コーネル・マフィア” と呼ばれるコーネル大学ホテル経営学科卒業。マリオット歴26年で、イアン・シュレイガーとの共同プロジェクトであるエディション・ホテルの責任者もつとめた。ソレンソン氏のもとで忠実に仕事をしてきた人物だ。

 マリオット創業者一族の二代目で、現会長のJ.W.ビル・マリオット・ジュニアは88才と高齢だが、まだまだ元気。

 とりあえず、ソレンソン氏亡き後も彼がつくった流れは継承しつつ、もうひとつ、しっかりグループに重しとなる布石を打った。ソレンソン氏との間ではすでに出来ていた話ではあったが、それを今回はっきり形にした。

 自分は来年には引退予定であることを正式に表明し、自分の後継者として、末息子のデイヴィッド君を指名、3月15日にボード・メンバーとして取締役会入りさせた。

 社内では「若!」と呼ばれる三代目、といってもすでに47才。

 今やホテル界で闘う相手は自分の子供世代の20代、 IT ネイテイヴでコワイもの知らずの若者たちだ。

 今は天下のマリオットもコロナの影響で大変。世界一のホテルチェーンというスケールを背負って、荒海で舵取りを迫られている。

 社員を仲間として家族として大切にする、はずだったが、昨秋にはコロナのための経営悪化で約4000人いた本社社員の17%にあたる673人をレイオフして「あのマリオットが・・・」と業界では大きな話題になった。

 「コロナの今なら世界一のマリオットだって買えるぜ」・・・なーんて言って虎視眈々と狙っている投資家たちが世界にはうじゃうじゃいる。この日本でも、マジで検討してる大手機関投資家もいるしね。

 ホテル界の大御所マリオットだが、さて、これからどうなるか。

 マリオット一族については、ここで書いた “マリオット・カルチャー” らしからぬ、家庭内の内輪揉めの話なんかもあるので、こっちはまた改めて、ね。

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