ハイアットって、どんなホテルブランド? <前編>

 ヤンセンです。
 今回は、ハイアットのホテルブランドについて書いてみたい。
 ハイアットって、いい響きだよね? なんだかキリッとシャープで洗練された感じがする。
 プリツカー・ファミリーが創業家なんだけど、ハイアットの第一号ホテル、ロサンジェルス国際空港の近くのモーテル「ハイアット・ハウス」を1954年に開業したのがハイアット・ロバート・フォン・デン氏でね。そのホテルを1957年に220万ドルで買ったのが、ジェイ・プリツカー氏。買った後も名前を変えず「ハイアット・ハウス」として営業を続け、チェーンの名前もハイアットにしたってわけだから、彼もハイアットっていい名前だって思ったんだろうね。
 プリツカーっていうと、建築のノーベル賞といわれるプリツカー賞が有名だけど、この賞が生まれるきっかけになったのは、1967年にアトランタに開業したハイアット・リージェンシー・アトランタだった。地元出身の建築家ジョン・ポートマン氏が設計したホテルなんだけれど、当時はじめてホテルに使われた22階吹き抜けのアトリウム・ロビーとシースルーエレベーターで人々の度肝を抜き、世界的に話題になった。ジェイ・プリツカー氏もいたく感動して、「建築には人の心を動かすパワーがある」と建築に興味を持つようになったんだそうだ。そうして1979年にプリツカー賞を作った。
 話はちょっとそれるけれど、ちょうどアトランタ・オリンピックの前の年だったか、建築雑誌に頼まれてジョン・ポートマン氏のインタビューに行った。「ハイアット・リージェンシー・アトランタ」のアトリウムロビーに入るとワクワクしてすごく楽しい気分になるって言ったら、「そうだろ、そうだろ? ホテルってのはね、楽しくなくっちゃね!」ってうれしそうだった。彼が手がけたビルでは「このドアのここんとこのシェイプも僕がデザインしたんだよ、あ、このちっちゃなネジもね」って感じでひとつひとつ細いところまで説明してくれた。当時はもう70才越えてたけど、実にエネルギッシュで闊達で話していて楽しい人だったね。

ハイアットらしさって何?

 さて、ホテルブランドとしてのハイアットの話にもどる。
 こうした創業者の建築好きの流れもあって、建築インテリアに非常にこだわるホテルブランドだ。ハイアットが出てくる前までは、いかに効率よく限られたスペースに必要なものをおさめるかということがホテル設計を手がける建築家の使命だったんだけれど、ハイアットは逆にどこよりも省スペースとか効率を追求しつつ、同時にデザイン的なカッコよさも絶対必要条件にした。
 アマンリゾーツもデザインにこだわるホテルブランドとして知られているけれど、アマンの前後泊に泊まるホテルにハイアット系を選ぶ人ってけっこう多いんだよね。
 ハイアットにハイアット・リージェンシーに加えて新しいホテルブランドグランドハイアットパークハイアットが加わったのは、1980年のことだった。ニューヨークのグランドハイアット・ニューヨークとシカゴのパークハイアット・シカゴで、グランドハイアットの方はいわゆる “グランドホテル” 的機能をもった中規模ホテルで、パークハイアットは都市の “隠れ家” 的な小規模ホテルと当初は性格づけられていた。パークハイアットは最初はけっこう地味目な設定だったんだけれど、1994年開業のパークハイアット東京の成功もあり、その後、より高級路線のパーソナルタッチのホテルが求められる時代の流れもあって、だんだんハイアットの中では最高級グレイドのホテルブランドみたいになっていったって感じだね。
 一方、ハイアットリージェンシー・ブランドは、コンベンション機能を併せ持つ大型ホテルやリゾートでの展開に広げられていった。とりあえず パークハイアットグランドハイアットをはずれる ”その他” を全部吸収していったって感じかな。
 思えば1980年代のホテル界はハイアットが制していたね。ハイアットが次々と繰り出す新手をほかのホテルチェーンが追随して追っかける感じだった。
 たとえば、バスルーム。オーストラリア・シドニーのパークハイアット・シドニーの思い切ったバスルームのスペース使いとシティホテルのバスルームでのリラクゼーションを目的としたバスタイムの提案は後の「パークハイアット東京」につながり、パークハイアット・ブランドの目玉のひとつとなった。
 あとね、ハイアットのカッコよさは、スタッフのユニフォームにもみられる。ハイアットでは、ユニフォームはあくまでも「舞台衣装」。さらに言えばインテリアの一部と考えられていて、その土地の民族衣装とかローカル性を取り入れつつ、都会的で洗練されたスタイルに仕上げるのがハイアット流。そして、バックヤードのスタッフたちはシンプルに決めてブラックに統一。これがまたカッコいいんだよね。
 あと、ハイアットらしさっていうと、料飲だね。ホテル界では「FB(料飲)に強いハイアット」って言われていて、ハイアットのFB出身者は転職の際に強みになる。
 なにが違うのかというと、たとえばビュッフェ。料理のプレゼンテーションにもデザイン感覚を持ち込んだ。それまでは、単に料理を並べるだけだったビュッフェの世界に、見るだけでわくわくして楽しくなるような魅せるビジュアルや、楽しさといったものを持ち込んだ。
 昨今、デザインホテルだのブティックホテルだの、ライフスタイルホテルだのって、どこもかしこもデザインにこだわるってのが主流になっているけど、そもそもはハイアットが始めたことだったってわけ。
 というわけで、後編に続きます。